会陰ヘルニア
[2013年11月03日]
会陰ヘルニア
症例は10歳齢の未去勢オスのシーズー。便がなかなか出なくなってしまったとのことで来院しました。直腸検査(肛門から指を入れて中を触診)をしてみると、肛門周囲の筋肉が萎縮し、中で直腸が蛇行しており、会陰ヘルニアと診断しました。
会陰ヘルニアとは、中高齢の未去勢のオスに発生する疾患で、臀部周囲の筋肉が萎縮することで直腸や膀胱・前立腺、尿道が変位し、排便障害や排尿障害を呈します。
本症例では、特に右側で筋肉の委縮が激しく、肛門右の皮膚のたるみ、肛門の右方への変位が認められました。そこで、手術により会陰ヘルニアの整復術を行いました。
上の画像は、肛門の両脇を切開し、医療用メッシュ素材を挿入した様子です。萎縮してしまった筋肉の代わりに、このメッシュを使って直腸の壁を再建します。
左側のメッシュを周囲の筋肉・結合組織・靭帯などに固定した様子です。右側も同様に固定します。
肛門右側の術創の縫合後の様子です。左側も同様に縫合します。最後に直腸検査をして、直腸がまっすぐに伸びているのを確認して終了となります。以降、排便はスムーズに行えるようになります。
会陰ヘルニアには、自己の筋肉や組織を使って整復する方法と、本症例のようにポリプロピレンメッシュなどの医療用人工素材を使って整復する方法があり、症例によって使い分けます。近年では再発が少ないという理由から、メッシュを使った手術法が行われる機会が多くなっています。