橈尺骨遠位端骨折
[2015年11月10日]
橈尺骨遠位端骨折
症例は推定2歳齢のメスのトイプードル。抱っこしていた所、突然飛び降りてしまい、キャンと鳴いて左前肢を着かなくなってしまったとのことで来院しました。以下は初診時のX線検査所見です。
X線所見より、橈骨・尺骨の骨折が確認されました。(上画像矢印)
そのため、外科的にプレート固定による整復を行なうこととしました。以下の画像が手術時の様子です。
画像左が骨折部の様子です。黒矢印は橈骨の近位(体に近い側)の骨折端、白矢印が遠位(足先側)の骨折端を示しています。
画像右はプレート固定を行ない、骨折整復した後の様子です。橈尺骨は、骨への血流が元々悪いことから、骨折すると癒合不全を起こしやすいことが知られています。そのため、本症例は海面骨移植を行ないました。
上の画像は海面骨移植を行なうため、上腕骨より海面骨を採取している様子です。採取された海面骨を骨折部へ埋め込むことにより、骨癒合を促進します。
術後X線所見です。術後は安静を保ち、徐々に運動量を増やしていきます。本症例は骨癒合が順調に進みましたが、プレート下の骨にやや骨粗鬆が認められたため、段階的にインプラントの抜去を行ないました。
(インプラント:生体内に埋め込まれたプレートなどの人工素材のこと)
上画像は術後3ヵ月でスクリューを3本抜去した様子です。再骨折を防ぐため、一度に全てのインプラントを抜かず、段階的に抜いて行きます。
術後5ヵ月で骨粗鬆も改善したため、インプラントを全て抜去し完治しました。
本症例は橈骨の骨幅がわずか4.5mmしかないため、設置するプレート、スクリューは極小のものになり、やり直しがきかず難易度はかなり高くなります。