口腔鼻腔瘻
[2016年10月22日]
口腔鼻腔瘻
症例は12歳齢のミニチュア・ダックス、未去勢オス。慢性的にくしゃみ・鼻汁が発生しており、身体検査を行った結果、歯石・歯周病による口腔内の炎症が、鼻腔内にまで波及していることが分かりました。そのために症例は慢性鼻炎となり、鼻腔症状が発生していました。以下は口腔内の外観です。
重度の歯石の付着・歯周病があり、犬歯の動揺が認められました。犬歯周囲の歯肉には穴が開いており、口腔鼻腔瘻(口腔と鼻腔がつながった状態)を起こしていました。
症例はある程度高齢のため、飼い主様は投薬などの内科的な管理を希望していました。しかし、徐々に鼻腔症状が悪化していきました。
麻酔下での処置は年齢が上がるほどリスクが高くなります。そのため、飼い主様はこれ以上悪化する前に、麻酔下での口腔内処置を希望されるようになりました。そこで、口腔内の細菌培養検査を術前に行った上で、麻酔下での口腔内処置を実施しました。
上の画像は、歯石をスケーラーで落とし、根尖膿瘍を起こしていた犬歯・臼歯を抜歯した後の様子です。感染巣となっていた歯を抜歯し、洗浄・抗生剤の注入を行いました。
次に、抜歯後に空いてしまった骨孔・傷を埋めるため、露出した顎骨をラウンドバーで滑らかなラインになるよう削り、口腔粘膜を使ってフラップ形成を行いました。以下の画像が粘膜フラップを施した後の画像です。
画像は上顎の様子です。傷が埋まっているのが分かります。これにより、口腔内と鼻腔が交通してしまうのを防ぎます。下顎についても、同じように粘膜フラップを行いました。
症例は麻酔による合併症もなく、口腔内処置後には鼻腔症状が軽減し、QOLが向上しました。(QOL:quality of lifeの略で、生活の質のこと)
高齢動物の麻酔は、若い動物より麻酔リスクが高まります。実施にあたっては、麻酔をかけて処置をすることで得られる利点と、麻酔による合併症のリスクをよく検討し、飼い主様とよく相談した上で、方針を決定することが重要です。