呼吸器疾患・人工呼吸管理セミナー
[2017年03月21日]
こんにちは。獣医師の平松です。昨日は臨時休診を頂き、動物救急センターER府中でセミナーを受けて参りました。
2月にセミナーに参加した時にはまだ看板がありませんでしたが、昨日は行ってみるとオレンジ色の目立つ看板が付いており、分かりやすくなっていました。
今回のセミナーは人工呼吸管理が必要な疾患や、人工呼吸器の各モードの特性・適応など、朝10時から夕方4時までまずはみっちり講義を受けました。
その後、夕方4時から夜8時過ぎまで、換気量を細かく測定できる生体モニターと、様々なモードが選択できる人工呼吸器が搭載された最新麻酔器を、実際に作動させる実習を行いました。朝から晩まで10時間、さすがに疲れましたが大変勉強になりました。
↑ 今回使用した機器はGEヘルスケアのCareStation650という、人間用の麻酔器です。たくさんのモニターが付いています。こちらの機器は小児にも対応しているため、1kgの小型犬にも使用可能です。なぜ動物用ではなく人間用を使っているのかというと、人間用の方が人工呼吸の設定が細かくできるからです。
人間用の人工呼吸器は、人工呼吸による肺の損傷が起こらないよう、患者の状態によって様々な設定ができるようになっています。それは人間の場合、人工呼吸器を使う場面が手術時だけではないからです。呼吸器疾患などで必要があれば、何日も人工呼吸器に接続したまま呼吸管理をするケースがあります。長いと数週間〜数ヶ月、またはそれ以上の間、人工呼吸器により呼吸を管理することもあります。
それに対し動物の場合は、手術中にだけ人工呼吸器を使うことが多く、長い手術でも6時間程度です。そのため、何日にも渡って人工呼吸を行ったことで起こるような肺損傷の問題は、動物ではあまり考慮する必要がないと考えられているようです。
そもそも手術時以外で、重篤な呼吸不全のある犬や猫に対し人工呼吸による呼吸管理を行うとなると、完全な24時間監視体制が必要となります。これは少人数の動物病院には不可能です。2日も徹夜すれば、スタッフが先に倒れることになります。
しかしER府中のような24時間病院では、これまで助けれなかった呼吸不全をもつ動物を、このような最新の人工呼吸器を使うことで助けることができるようになるかもしれません。これは大変すばらしいことです。
今回学んだ人工呼吸の知識は、設備・人材の問題もあり、すぐには梨の木どうぶつ病院では応用できるものではないかもしれません。しかし、多くの選択肢を提示できるよう最新の知見を蓄積し、一匹でも多くの犬猫を救えるようになりたいと思います。
獣医師 平松