血管シーリングシステムの選択 その2
[2020年09月14日]
こんにちは。獣医師の平松です。前回のブログでは、血管シーリングシステムの機能について書かせて頂きました。今回は色々なメーカーが出している機器を見ていこうと思います。前回のブログをまだお読みでない方は、そちらを先にご覧くださいませ。
↑ こちらはエルベ社の高周波電気メス「VIO3」です。基本機能は電気メスと一緒で、バイクランプと呼ばれるクランプ型の血管シーリングデバイスが接続可能で、シーリングすることができます。血管をシーリングする際、シーリングが完了すると電気抵抗の変化を感知して自動的に通電をストップしてくれます。その後、外科剪刀などでシーリング部分を離断します。
前回のブログで説明したパターン1のシーリングシステムです。電気によるシーリングは、シーリング力が強く、7mm程度の太さの血管にも適用できるメリットがあります。自動で通電をストップしてくれるため、安全性も高いと言えます。一般的な電気メスとしてバイポーラ(ピンセット型)やモノポーラ(メス型)のデバイスも使い勝手は良く、全体的に汎用性が高い良い機器だと思われます。
ネックは導入に数百万円かかる高額機器である点が挙げられますが、全てのデバイスはオートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)で滅菌可能なため、滅菌にかかる費用は電気代+αで済みます。
↑ こちらの機器はオリンパスが出している超音波メス「ソノサージ」です。電気メスと異なり、組織を焼くことなく超音波の振動で変性させることで血管をシーリングし、そのまま離断することが可能です。前回ブログでいうところのパターン2になります。組織への侵襲が少なく、口腔内組織や肝生検などにも適用可能です。
超音波メスは血管シーリングだけでなく、乳化吸引という腫瘍を溶かしながら吸い取ってしまうというキューサーと呼ばれる特殊なデバイスもあり、電気メスとは違った使い方もできます。
ネックとしては、組織侵襲が少ない分、シーリング力がやや弱く、太めの動脈には使えません。5、6mmぐらいの血管には使用可能です。また、現在は製造終了しているため、導入には中古品を探す必要があります。デバイスの滅菌はオートクレーブが可能なため、こちらも滅菌にコストはあまりかかりません。
↑ こちらはエルマン社の高周波電気メス「サージトロン」です。以前こちらのブログでもデモの様子を書かせてもらいました。シーリングするためのクランプ型のデバイスが最近改良され、使い勝手が良くなりました。こちらの機器はエルベ社のVIO3とは異なり、血管抵抗などは感知せず、シーリングを止めるタイミングは外科医の判断になります。オートで通電が止まるVIO3に対し、マニュアル操作で通電を止めるサージトロンという違いがあります。前回ブログでいうところのパターン1になります。
バイポーラやモノポーラといったデバイスを使用する、一般的な電気メスとしての機能は問題なく、一番のメリットは機器の導入がとても安価になる点が挙げられます。他の機器は導入するのと比較し、サージトロンは1/4〜1/5程度のコストで済みます(それでも100万円以上かかりますが…)。デバイスの滅菌も全てオートクレーブ対応となっており、費用対効果はかなり良いように思います。
↑ こちらは富士エスエルアイ社の半導体レーザー「BERG-G」です。電気メスとも超音波メスともまた異なる、半導体レーザーと呼ばれるレーザー光線をデバイス先の金属に伝えることで熱を発生させ、組織のシーリングを行います。シーリング機能の他に、電気メスのように止血しながら組織の切開を行うこともできます。シーリングとしては前回ブログでいうところのパターン1ですね。
また他の機器にはない機能として、緑内障の発生時に眼内の毛様体と呼ばれる組織にレーザーを当てることで眼圧の上昇を防いだり、腫瘍を蒸散させたり、外科以外にも関節痛・腰痛などに疼痛緩和としてのレーザー照射を行うことも可能です。
自分は半導体レーザーを使ったことがないため、使用感はわかりませんが、使っている知人の話を聞くと、血管シーリングや組織を切るのに結構時間がかかるようで、サクサク進められるといった印象ではないようです。また、使用する際は目を保護するため、ゴーグルを着用する必要があります。
費用はエルマンのサージトロンほどではないですが、比較的安価に手に入るようで(おそらく200万円くらい?)、滅菌もオートクレーブ対応で費用対効果が高いように思います。
ハッ!!気がついたら、大分長文になってしまいました!!今回のブログではこの辺で終わりにしたいと思います。次回はあと3つほど機器を紹介し、終わりにしたいと思います。あと3つも!?と思われた方もいるかもしれませんが、宜しければ…!宜しければお付合い下さいませ!
獣医師 平松