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TPLO用パワーツール その2

[2023年05月15日]

こんにちは。獣医師の平松です。前回は前十字靭帯断裂の整復術であるTPLOについて、概要を説明させて頂きました。前回のブログをまだご覧になっていない読者様は、前回ブログを先にお読み下さい。今回はそのTPLOにおいて、骨を半円状に切るために使用するTPLOソーについてです。

前回のブログでもお伝えした様に、TPLOでは脛骨高平部の角度を変えるために、その部分を半円状に骨切りし、計算された角度になるよう骨を尾側へ回転させ、そして特殊なTPLOプレート・スクリューにて骨を固定します。

↑ TPLOを行った膝関節の模型、横から見た図。膝関節の下の骨 (脛骨)が半円状に骨切りされ、尾側へ少し回転させてプレートで固定されています。こうすることで膝にかかる力の方向が変化し、膝関節が強固に安定します。

↑ 上の画像は膝関節の術前X線画像です。体重や骨の大きさ・脛骨高平部の角度を確認し、どこをどのぐらいの大きさで切るのか、緻密な術前計画を立てます。ここを間違えてしまうと、術後の回復が遅れたり、合併症のリスクが高まる可能性があります。

この骨を半円状に切ってくれるのがTPLOソーなのですが、現在、梨の木どうぶつ病院で主力として使っているのが、desoutter MEDICALのVdriveです。コチラ。↓↓↓

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こちらのピストル型のパワーツール「Vdrive」は、アタッチメントを変更することでドリルとして使えたりK-ワイヤーチャックとして使えたり、様々な用途で使えるので、とても便利です。また、バッテリー駆動のため、電源コードが必要なく、ツールの取り回しがとてもしやすい点もメリットです。

しかし前回ブログでも書いた様に、小型犬では少し切れの悪さを感じており、窒素ガスで駆動するTPLOソー専用パワーツールも使ってみました。コチラ。↓↓↓

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コチラのパワーツールはTPLOソー専用であり、Vdriveのようにドリルとして使ったり他の用途では使えません。しかし、窒素ガス駆動のためトルクが最強で、小型犬でもスムーズに骨を切る事ができました。

作動音としては、ギュイィィィィィィィーーーン!!!!と工事現場さながらのけたたましい音がしますが、ソーの切れはとてもよく、これはストレスが少なくて良いです。

デメリットとしては、上画像で示した様に窒素ガスを用意しておかなければならず、バッテリー駆動よりも消耗品コストがかかります。接続ホースも手術中には少し邪魔になり、また、TPLOソー以外にはこのツールは使えず汎用性はありません。

しかし、TPLOをスムーズにすすめるため、こちらのパワーツールを導入することも検討しております。(現在、窒素ガス駆動TPLOソー専用パワーツールは借りて使っております)

 

↑ TPLOの術後X線画像。こちらの症例は体重が2kgと軽く、骨の回転距離も長かったため、仮固定のk-ワイヤーも残して手術を終了しております。

Vdriveも窒素ガス駆動TPLOソー専用パワーツールも、現在日本での販売はMovora社が請け負っているため、担当者に相談してみました。すると最近、Vdriveで従来のバッテリーよりも大型のバッテリーが登場したそうで、Vdriveがよりパワーアップしたとのことでした。

今度、こちらの大型バッテリーをデモとして使わせてくれることになりました。もし、この大型バッテリーで十分なパワーが得られれば、新しいパワーツールを買わずに済みますし、窒素も用意しておく必要もなく、またホースなど取り回しも気にすることなく手術を実施することができます。

導入コストとしては、窒素ガス駆動の新しいパワーツールを買うのもVdriveの大型バッテリーを追加で用意するのも、あまり変わりがないようなのですが、より手術がスムーズに進むよう、よく検討して選んでいきたいと思います。

それでは今回の話題はこの辺で終わりたいと思います。マニアックな内容に最後までお付き合い頂いた皆様、ありがとうございました!また次のブログでお会いしましょう。

獣医師 平松