骨盤骨折・仙腸関節脱臼
[2014年01月07日]
骨盤骨折・仙腸関節脱臼
症例は年齢不明の外飼の日本猫。外から家に帰ってから歩き方がおかしいとのことで来院しました。以下が初診時レントゲン所見です。
レントゲン検査により、左の仙腸関節脱臼(白矢印部分・背骨と骨盤を繋いでいる関節)と、左の腸骨骨折(黒矢印部分・骨盤を構成する骨の一つ)が確認されました。
このように、腸骨・坐骨・恥骨といった骨盤を構成する骨の骨折が確認された場合、骨盤周囲に存在する尿道や直腸も損傷を受けている可能性がありますが、本症例は尿道や直腸の損傷は確認されませんでした。
そのため、歩行の回復と、骨盤狭窄による排便困難の回避を目的として、仙腸関節脱臼の整復を行いました。以下が手術後のレントゲン画像です。
スクリューとキルシュナーワイヤーにより、仙腸関節の固定を行いました。なお、股関節より後方の腸骨骨折の場合、体重負荷に影響がなく、通常あえてプレート固定などを行う必要はありません。そのため、本症例も黒矢印で示した通り、腸骨骨折はそのまま温存しました。術後、排便困難はなく、歩様も3週間ほどで回復しました。
仙腸関節脱臼や腸骨骨折などの骨盤骨折を起こすと、歩行の問題だけでなく、骨盤狭窄から重大な排便困難を起こす可能性があるため、受傷後早期に整復手術を行う必要があります。