子宮蓄膿症
[2014年10月11日]
子宮蓄膿症
症例は7歳齢の未避妊メスのチワワ。ここ数日食欲が無く、元気がなくなったとのことで来院しました。身体検査では、陰部より少量の排膿が認められ、各種検査を行いました。
上の画像はレントゲン検査所見です。子宮の位置に軟部組織陰影が認められました(矢印部分)。
上の画像は超音波検査所見です。レントゲン検査の矢印のあたりに超音波を当てています。正常な子宮は超音波検査では見えないことが多いですが、本症例では子宮と思われる陰影がはっきり確認されました。また、血液検査では白血球の増加が認められました。
以上より子宮蓄膿症を強く疑い、開腹手術を行いました。
術中所見です。画像の右が頭側、左が尾側です。膿を溜め込んだ左右の子宮角を確認しました。本症例は子宮から腹腔内に膿が漏れ出て、重度の腹膜炎を併発しており、非常に危険な状態でした。
腹水の培養検査を行い、子宮・卵巣摘出術を実施しました。
お腹を裏打している腹膜は重度に充血し、腹水が認めれます(左画像)。また、腸間膜にも炎症は波及し、出血が認められます(右画像、矢印)。そのため子宮・卵巣を摘出後に、温めた生理食塩水を用いて腹腔内洗浄を十分に行いました。
術後にも腹腔内の滲出液が排液されるよう、閉腹時にドレーンを設置しました(下画像の矢印)。
このドレーンは腹腔内まで繋がっており、毛細管現象によりお腹の中の汚れた液体が排出されます。本症例は5日程で排液が認められなくなったため、その時点でドレーンを抜去しました。
術後は静脈点滴と、培養検査結果より選択された抗生剤の投与を行い、数日で元気食欲は改善し退院となりました。
子宮蓄膿症は中高齢の未避妊メスに発生する病気で、発見が遅れると腎不全や腹膜炎を併発し命に関わります。若いうちに避妊手術を行うことで、この病気は予防することができます。