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インプラント感染

[2016年10月20日]

インプラント感染

症例は6歳齢の日本猫、未避妊メス。事故により右後肢を骨折し、他院にて手術を受けたが、手術部位がグズグズになり、以降6ヶ月以上も通院しているが、傷が治る気配が全くないとのことで、セカンドオピニオンを求めて来院されました。

以下が初診時の外観です。

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画像は右後肢の外観です。赤矢印で示した足首にあたる箇所が術創です。感染を起こしたために漿液が分泌され、そこに乾燥剤を使ったために分厚いカサブタが形成されていました。以下が初診時のX線画像です。

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白矢印で示した部分が右足根部の病変部です。第2中足骨が溶けており、第3〜5中足骨にも骨膜反応が出ています。このままでは傷が治らないばかりか、骨髄炎を起こし断脚が必要になる可能性が高い状態でした。

そこで、麻酔下にて感染巣の精査を行いました。以下の画像は麻酔下でカサブタを除去した後の様子です。

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カサブタを除去すると皮膚は大きく欠損しており、さらに奥を探査すると、中足骨を取り巻くようにナイロン糸が出てきました。鉗子で掴んでるのがナイロン糸です。恐らく最初の手術に使用されたものと思われます。このナイロン糸(インプラント)が感染巣となっていることが分かりました。

インプラントとは、体に埋め込まれた医療用人工素材(非吸収糸やプレート・スクリューといった金属など)のことです。

そこで感染巣になっていたナイロン糸を全て取り除き、培養検査のための検体を採取した後、術創を徹底的に洗浄しました。その後は定期的に洗浄・包帯交換を行っていきました。

img_9449取り除かれたナイロン糸

img_2929術後2週目

img_1829術後5週目

最終的に、初診から2ヶ月ちょっとで傷は完治しました。

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症例は受傷より6ヶ月、こちらの病院へ来た後も加えると8ヶ月もの間エリザベスカラーを装着した生活を余儀なくされていました。猫にとっては相当ストレスであったと思われますが、現在はそのような生活から解放されました。

整形外科手術後に感染を起こすと、足の機能が回復しないだけでなく、骨髄炎を起こし、死に至る可能性があります。またそれを回避するため断脚を行わざるを得ず、結果的に足を失うこともあります。

整形外科手術を実施する際は、感染を起こさないような手技・技術の修練と、衛生的な環境を徹底的に整備する必要があります。