サブトータル結腸切除
[2017年07月03日]
サブトータル結腸切除
症例は推定5歳齢の日本猫、去勢オス。最近食欲がなく、少量の下痢が出たとのことで来院しました。腹部を触診すると、大腸の領域に硬い塊が触知されたため、便秘を疑い、X線検査を行いました。
上の画像は腹部のラテラル(側方向)像です。症例は便秘により大腸が異常に拡張し、腹腔内を占拠していました(黄色矢印部分)。そのため便が全く出ず、食欲不振に陥っていました。
ここまで便秘が悪化すると、浣腸などの内科処置では管理が難しいため、外科療法により拡張した大腸の一部(結腸)を切除することとしました。
上の画像は術中初見です。画像上が頭側、下が肛門側です。徒手にてある程度便を排出させた後の結腸の所見です(黄色矢印部分)。赤矢印は膀胱です。結腸は血流は悪く紫色がかっており、弾力が失われています。この箇所の結腸を切り取り、短くなった腸を吻合しました。
上の画像は切り取った結腸の断端を吸収糸にて吻合した様子です。腸の内容物が漏出しないようしっかり縫いますが、きつく縫いすぎると血流が阻害され、断端部の腸が壊死するため、絶妙な力加減で縫う必要があります。
この画像は切除した結腸です。全部で15cmほど切除しました。血流が悪くなってしまった腸を切り取り、吻合する手技は、比較的技術力を要します。術後も腸の内容物が漏出していないか、注意深く監視することが重要です。
この症例は術後経過良好で、便が定期的に自力で出せるようになり、元気・食欲とも回復しました。以降は便を排出しやすくなるような処方食などを与えるようにし、再び便秘になることを防ぐ必要があります。