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セミに触れない

[2015年08月07日]

こんにちは。獣医師の平松です。猛暑日が続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。夏といえばセミの鳴き声ですが、近年、セミ本体を見る機会は少なくなっています。年齢とともに室内にいることが多くなったためかと思われます。

ある日、診療終了前の19時半ころ、セミがバタバタと風除室に入り込みました。まぁ外の扉を開けておけばその内出ていくであろうと思い、特に気に留めませんでした。

←風除室

ところが次の瞬間、入り口付近にいた飼い主さんがそのセミをむんずと掴み、なんと受付の盲導犬募金箱にくっつけたではありませんか!

犬の後頭部に止まったセミ。まさかのこの光景に悲鳴を上げる看護師さん。僕がセミを捕まえるのを躊躇していると、その飼い主さんに、なんだ獣医さんなのにセミを触れないんですか〜(笑)と言われてしまいました。

ちょっと自分、セミは専門外なもので、こういうカサカサした生き物はちょっと…などと言って右往左往していたら、その飼い主さんは、この様子だとたぶん明日までには死んじゃうかな、じゃあまたよろしくお願いしまーす!と言って帰ってしまいました。

残された僕ら病院スタッフとセミ。セミは犬にくっついたまま微動だにしません。しかしこの至近距離でセミを見たのは何年ぶりでしょう。幼少時代は虫を捕まえるのは大好きでしたが、中学ぐらいから疎遠になり、今ではほとんど触れません。仕方ないので、この募金箱ごと外において、どこかに飛んで行くのを待つことにしました。

すると、セミはバタバタっと少し飛んで、すぐにひっくり返って落ちてしまいました。飼い主さんが言っていた通り、もう死んでしまう寸前だったのですね。その飼い主さんのセミの予後判定能力には感心しました。

セミが入り口真ん前でひっくり返っていては、誰かが踏んでしまったり、犬がくわえてしまうかもしれません。看護師さんが、もう死んじゃったかな?と聞いてきたので、そうだねと言いました。

看護師さんはほうきでそっとセミを入り口の脇へ移動させようとしましたが、その時、セミが突如バタバタバタバタッ!!と飛んで行き、看護師さんがギャァーー!!と叫びました。

看護師さんには、生きてるじゃん!!と怒られましたが、セミにとって最初で最後の夏、存分に生き抜いてもらいたいものです。触れませんが。

獣医師 平松