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TPLO用パワーツール その1

[2023年05月12日]

こんにちは。獣医師の平松です。梨の木どうぶつ病院では一般診療や予防獣医療のほか、整形外科に力を入れて診療を行っております。その中でも、前十字靭帯断裂の手術は多く手がけております。

前十字靭帯とは大腿骨(太ももの骨)と脛骨(スネの骨)を結んだ靭帯で、膝が安定して体重を支えることができるよう2本の骨を連結しています。前十字靭帯が切れると膝の安定性が失われ、疼痛とともに脛骨が前後方向へ動揺し、足を引きずったり挙上するようになってしまいます。

それを治療するため手術を行う訳ですが、近年ではラテラルスーチャーと呼ばれる人工靭帯(強い糸)を使った再建術よりも、TPLOと呼ばれる骨切り・脛骨高平部水平化・固定という手技の手術の方がより成績が良いため、こちらが実施される傾向にあります。専門病院では、TPLOが第一選択となります。

上の画像は、TPLOを行った様子を示した骨模型です。これはどうなっているかというと、膝に近い部分の脛骨を半円状に骨切りし、脛骨高平部が決められた角度になるよう骨を尾側へ回転させ、その状態でキノコの様な特殊な形をしたプレートで固定をしています。

こうすることで、大腿骨が接する脛骨の上部(脛骨高平部)の角度が変わり、力学的に脛骨への負荷の方向が変化し脛骨が前後方向へグラグラしなくなり、膝が強固に安定化する、という術式になります。梨の木どうぶつ病院でも前十字靭帯断裂の手術を行う際には、このTPLOを実施することが圧倒的に多いです。

さて、この術式の問題点としては、ラテラルスーチャーよりもTPLOの方が技術的に実施が難しいという点と、上の模型の説明でも示したとおり、半円状に骨を切る特殊なパワーツールが必要である点が挙げられます。

梨の木どうぶつ病院で使っているパワーツールと言えば、主力はVdriveになります。上の画像の、緑色っぽいピストル型のツールがそれです。こちらのパワーツールは、アタッチメントを変えることで、ドリルビットやK-ワイヤー、サジタルソーなど様々な用途で使う事ができます。

↑ Vdriveのアタッチメント。この中で、TPLOの際に使用する半円状に骨切りをするためのTPLOソーのアタッチメントもあります。これにより、Vdriveではアタッチメントを交換しながら骨切りからプレート固定まで、一つのパワーツールでTPLOの手術を完結する事ができます。

↑ 骨を半円状に切るTPLOソー。小型犬から大型犬まで対応できるよう、様々なサイズがあります。様々なメーカーがこのTPLOソーを販売しており、メーカーによって刃高など細かな違いがある様です。

しかし最近、VdriveでTPLOを行う際に、4kg以下ぐらいの小型犬ではどうも骨切り時にTPLOソーの切れの悪さを感じていました。毎回手術は無事に終了しているのですが、もっとスムーズに骨切りができると、ストレスがなく良いなと思っておりました。

そこで先日行ったTPLOでは、バッテリーで動くVdriveではなく、窒素ガスで駆動するTPLO専用ツールを使って手術を行いました。

↑ 窒素ガスで駆動するTPLO専用パワーツール。

ブログが長くなってきたので、今回はこの辺で一旦終了したいと思います。ちょっとマニアックな内容ですが、宜しければ次回もお付き合い頂けると幸いです。

獣医師 平松